当研究所は福祉村病院の東端に位置し、第一病棟、第二病棟に挟まれた形で立地する建築物です。福祉村長寿医学研究所の中枢をなす施設で93年5月に1階部分、97年夏に2、3階部分が完成しました。各種実験設備を整えており、オールラウンドな研究を行うことが可能です。

 

 

 

 

 

 

 

 ミクロトーム、クリオスタット、パラフィン包埋機、ディスカッション顕微鏡、デジタル撮影用顕微鏡、

 オールインワン蛍光顕微鏡システム(KEYENCE)

 

 固定された組織をパラフィン包埋する自動包埋機3台、厚さ4.5マイクロメートルの切片として薄切するミクロトーム3台、未固定で凍結された組織を薄切するクリオスタットと呼ばれる機器があります。病理解剖で採取された組織は特別な処理をされ、主にパラフィン(ロウ)の中に埋め込まれます。これを薄く切ってスライドガラスに載せ、各種染色液で色付けをして顕微鏡上で細胞などを見やすくする一連の行程がここで行われています。

 当研究所にとって今や病理診断はブレインバンクの根幹をなすため非常に重要な位置をしめします。ここでは一般臓器は勿論、中枢組織の標本作製も行われます。中枢組織は特に長時間の処理を要し、また脳全体を観るためには大きな組織標本を作成する必要があります。現在、コスト、標本作成の困難さから我々が作成しているような脳大切片の組織標本で病理診断を行なっている施設は日本でも数が限られています。

 

 中枢神経に関連する病理診断には主にHE染色、KB染色、ガリアス染色、免疫染色を用いて脳組織を染色し病理診断の判断材料とします。免疫染色で用いる主な抗体はアミロイドβ、リン酸化タウ、リン酸化シヌクレイン、TDP43等があります。全身臓器組織がある場合も同様に各種染色・検鏡を行います。この他にも病状に合わせた染色を行い、診断を確実なものにしていきます。

 

 

 

 

 

 電気泳動装置、2次元電気泳動装置、ブロッティング装置、プレートリーダー、X線フィルム現像暗室

 

 SDS-PAGE、ウェスタンブロッティング法、ELISA法などの従来のタンパク質実験の他、2次元電気泳動装置を用いてのプロテオーム解析も行っています。

 

 

 

 

 

 インキュベーター、電気泳動装置、分光光度計、サーマルサイクラー、全自動核酸抽出装置

 

 ACEやApoEといった生体内にある遺伝子配列を調べることにより、特定の病気になりやすいかどうかのリスクファクターを調べることができます。当施設では臨床診断を行うための遺伝子解析は行っておりませんが、病理データや臨床データと照らし合わせながら基礎データの蓄積を行っています。

 RNA実験専用の部屋があり、分解されやすいRNAはこの部屋で抽出・実験することができます。RNA実験室内ではマスクや手袋の着用、部屋の中及び使用する試薬の中には分解酵素が存在しない環境となっています。

 また、遺伝子組み換え実験により特定の遺伝子を大腸菌や培養細胞に導入して発現させることも可能です。その際には拡散防止等の安全性を講じる必要があり、遺伝子組換え安全委員会の審議が必須となっております。

 

 

 

 

 クラスII安全キャビネット、CO2インキュベーター、細胞保管用液体窒素タンク、蛍光顕微鏡

 

 生体に近い培養液を用いてフラスコの中で細胞を飼育する事のできる部屋です。細胞が生体外で生きていく為の温度、湿度などの空気環境が厳密に管理されたCO2インキュベーターが設置されています。当然ながら細胞が生育しやすい環境は、カビや細菌にとっても好条件となりますので細菌汚染を防ぐためにも部屋の中では無菌操作が必要となります。培養操作をする時はクリーンベンチと呼ばれる機器の中で無菌操作を行い、作業時以外は部屋の中を紫外線で常に殺菌することで汚染防止を図っています。

 培養細胞へ発現ベクターを導入する事によるタンパクの産生や、脳細胞の初代培養、ハイブリドーマ作成による抗体産生といった培養実験が可能となっています。培養した細胞の保存には約マイナス200度の液体窒素入のタンクを使用し、永続的な保管管理を行っています。

 

 

 

 

 -80℃ディープフリーザー、温度センサー警報装置ならびに無停電電源装置、可動式書庫

 

 4℃冷蔵庫、-30℃冷凍庫はもとより、長期試料保管可能な-80℃ディープフリーザーを10台設置し、研究試料やブレインバンク試料を保管しています。主要なディープフリーザーには温度センサーを設置し、温度の異常上昇時や停電時にはCO2ボンベによる補助冷却装置が起動するとともに、管理者へアラートメッセージを送信するシステム(無停電電源装置導入)を導入しています(文部科学省 包括脳プロジェクト ブレイン ネットワークの一員であり同プロジェクトの分担研究費が充当されています)。

 また、病理組織サンプルを保管する可動式書庫を設置し、90年初年からの脳パラフィンブロックが保管されています。現在は600症例以上のサンプルが保管されています。

 

 

 

 

 各種飼育ケージ、ローターロッド

 

 病院から離れた戸建ての施設で、実験動物技術者資格(日本実験動物協会)を持つスタッフが管理している施設です。飼育可能な動物はマウス、ハムスター、モルモット、ラット等の小動物で、現在継代維持しているトランスジェニックマウスがいます。施設内には逃走防止措置が施されており、動物が脱走しない様に対応しております。

 動物実験を行う際には実験動物倫理に反しない様、実験動物倫理委員会での審議が必須となっております。

 

 

 

 

 

 

 LAN内共有ファイルサーバ、指紋認証ログインシステムPC

 

 病理標本のマクロ写真、臨床サマリーや病理診断書とった文章データ、症例検討会で使用した症例ごとのパワーポイントデータなどのデジタルデータは、研究所LAN内に設置されたファイルサーバに保管され共有されています。 

 ヒトの血液や組織など生体サンプルを使用するには、関連する臨床情報が必要になります。平成17年に施行された個人情報保護法に準じ、これら研究サンプルと個人が特定される情報が安易に結びつかない様に対策を講じております。個人情報管理室を設備し、病理解剖、臨床研究での個人情報は全てここに保管されて個人情報管理者の管理のもと、その運用が行われております。